残留基準値の決め方
農薬の残留基準値はADI(Acceptable Daily Intake)によって算出されます。
ADIとは「一日摂取許容量」のことで、
「人が一生涯にわたって毎日摂取し続けても、健康に影響を及ぼさないと判断される量」
として「一日当たりの体重1KGに対するmg数(mg/体重kg/日)で表されます。
このADIに、人の平均体重を乗じた値が、人間の摂取許容量になります。
平均体重は、日本人で50KG,欧米では国により60~70KGが用いられています。
【ADIの決め方】
まず最新の学問的知見に基づき、実験動物を用いて各種の毒性試験を行います。
実験動物は、原則として寿命の短い、ねずみやモルモットが用いられます。
そして、具体的な安全性の試験としては、急性毒性試験、亜急性毒性試験、慢性毒性試験、変異原性試験、発がん性試験、繁殖試験、催奇形性試験、その他の毒性試験、吸収・分布・代謝・排泄に関する試験、一般 薬理試験といった数多くの試験が行われ、必要に応じて抗原性試験(アレルギー)が実施されることもあります。
これらすべての毒性試験の結果、実験動物に毎日、生涯にわたって食べさせても、何ら毒性変化も認められなかった投与量 の上限が求められます。
これを「無毒性量(NOAEL : No Observed Adverse Effect Level)」と呼び、ADIと同様にmg/体重kg/日で表します。
この数字は、あくまで動物に対するものなので、実験動物と人間の差で10分の1、人間の性別 、年齢、健康状態などの個人差で10分の1を掛けて、合わせて通常100分の1の安全係数が乗じられます。
100分の1という安全係数は、経験的に決められたものですが、国際的にも再三にわたる評価検討を経て、安全性を確保するに十分な係数として認知されています。
ただし、試験データが十分でない場合などには、これよりも高い安全係数を用いることがあります。
ADIは、このような経過を経て、科学的に定められます。
つまり、食品中の残留農薬基準や食品添加物の使用基準は、かなり偏った食べ方をしても、ADIを超えない範囲に設定されています。
ですから、たとえ残留農薬が検出されたとしても、基準値以内であればまったく問題はありません。
【摂取許容量と生体への影響の関係】

上記表でもわかるとおり、ADIは念には念を入れて算出しており、残留基準値に関しても同様であることから、基準値を超えたものを摂取したからといってただちに危険ということではありません。
違反が発見された時に、厚生労働省が
「これを食しても健康にただちに影響を与えるものではない」と発表することが多いのは、このことが理由です。
さらに、違反が出たロットすべての商品に対して、廃棄又は輸出国への積み戻しの処分が行われ、国内に流通することはありません。
従って、基準値を超える事例が出るたびに、さも大変なことが起こって食品被害がすぐに迫っているかのような報道がなされるのは、非常に誇張されすぎているといえるのではないでしょうか。